地球温暖化で海水温上昇がアオウミガメに悪影響―水温37℃で細胞死、プログラムされたアポトーシスが原因:国立環境研究所ほか
(2025年3月17日発表)
(国)国立環境研究所、認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー、北海道大学、岩手大学らの研究チームは3月17日、地球温暖化による海水温の上昇がアオウミガメのDNA損傷を引き起こし、細胞死につながる可能性のあることを明らかにしたと発表した。アオウミガメは温暖化などの影響を受けやすい。今後モニタリングを強化するとともに、水族館などが生育保全を進める際の優先順位の判定などに培養細胞に注目が集まっている。
地球温暖化は生物多様性や人間、動物の健康、食糧生産などに様々な影響を及ぼしている。
夏場の高温がひとの健康に悪影響を与え、熱ストレスが鶏卵(けいらん)の産卵減少と農家の経済損失につながることなどが次々に報告されているものの、野生動物の直接的影響はあまり分かっていなかった。
アオウミガメは世界の温帯から熱帯の海にかけて広く生息している。その一つ米国フロリダ州では海水温が水深1.5mで約38℃に上昇しており、アオウミガメの急激な減少が起きている。
オーストラリアやマレーシアではメスの出生比率が上昇するなど野生動物に直接影響が出ている。高い海水温そのものが胚発生時に直接影響しているとみられる。
研究チームは死亡したアオウミガメの筋肉の細胞を培養し、温度別に影響を解析した。その結果、37℃で培養すると細胞がDNA損傷を引き起こし、プログラムされた細胞死アポトーシスにつながっている可能性を明らかにした。
アオウミガメは地球温暖化の影響を受けやすい。その影響を最小化するためには、モニタリングの強化と遺伝的多様性を保つために水族館などの飼育施設での保全が必要になる。
だが多大な費用と人手が要る。どの種を保存するかの優先順位を決定する上で、培養細胞法は重要な判断基準として使われるとみられる。