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8Kテレビ向け白色発光ダイオードの試作に成功―3原色のあざやかさ向上し、実用化に目途:物質・材料研究機構

(2017年2月23日発表)

 (国)物質・材料研究機構は2月23日、シャープ(株)と協力し、東京オリンピックに向けて開発が進められている8Kテレビ向けの白色発光ダイオード(LED)の試作に成功したと発表した。緑色蛍光体の発色を改良し、光の3原色の鮮やかさを向上させた。8K 放送のきれいな色を十分に再現でき、LEDバックライトの実用化に目途がついたとしている。

  テレビ画面を構成する液晶ディスプレイは、LEDバックライトが放つ白色光を色フィルターで赤緑青の3原色に分解して画像を表示する装置。

 2018年に実用放送が始まる8Kテレビ放送の解像度は、現在のテレビ放送の解像度の16倍、また普及期を迎えた4Kテレビの4倍あり、加えて、色の表現範囲も大幅に拡大される。このきれいな色の実現には、色純度がよい赤緑青から成るLEDバックライトの開発が求められ、特に緑色の発色の改善が課題になっていた。

 研究グループは今回、物材研究機構が先に開発したガンマアロン(γAlON)と呼ばれる緑色蛍光体を用い、これに元素を添加して組成を調整、純粋な緑色を発色できる蛍光体を作り上げた。これを用いて白色LEDを試作し、バックライトの性能を調べたところ、赤緑青のスペクトルの各ピークが鋭くたっており、3原色の色分離性が良く、高い色純度の達成が認められた。

  8Kの規格(超高精細テレビ用の色域規格)実現には赤緑青3色のレーザーを用いる方法と量子ドットを用いる方法も提案されているが、レーザー法は複雑で高価、量子ドット法は有害なカドミウムを使うので環境負荷が大きいなどの難点がある。白色LED方式はこうした問題がなく、今後明るさの改善や低コスト化を図り、実用化したいとしている。