損傷した神経の治療に使うナノファイバーメッシュ開発:物質・材料研究機構ほか
(2017年2月27日発表)
(国)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点と、大阪大学大学院医学系研究科整形外科学の研究チームは2月27日、損傷した末梢神経に直接巻いて神経の再生を促進し、手足のしびれや痛みを治す網目シート状の繊維を開発したと発表した。
末梢神経は脳や脊髄から分かれ、手足や目、耳、皮膚、内臓など全身に広がっている。脳の命令を手、足に伝え、逆に目や皮膚などで得た情報や刺激を脳に伝える働きがある。
これまで抹消神経の治療には人工神経が使われていたが、損傷部を橋渡しするだけで再生には効果はなく、使える患者数は限定的だった。
開発した繊維のサイズは数百nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)で、損傷した神経を直接包みこむことができる柔軟な素材でできている。神経を正常に回復させる効果のあるビタミンB12を組み込んで、修復するまで損傷か所に放出し続ける特殊な素材とした。
この繊維は生分解性プラスチックでできており、日時が経つと自然に分解され、体外に排出される。
坐骨神経を損傷したラットに移植したところ、術後6週間で神経の軸索が再生され、運動機能と感覚機能の回復が確認された。現在、製薬会社とともに新たな治療具として臨床応用を検討している。