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ダイコンの辛み成分の遺伝子を発見―におい・黄変のないたくあんも:農業・食品産業技術研究機構

(2017年3月7日発表)

 東北大学と(国)農業・食品産業技術研究機構(農研機構)は3月7日、ダイコンの辛みのもとになる成分の遺伝子を発見したと発表した。ダイコンをたくあん漬けにすると、この物質が分解されて黄色や独特のにおいの素になることも知られている。研究グループは今回の成果をもとにこの物質をつくらないダイコン新品種をすでに種苗会社と共同で開発しており、たくあん臭や黄変のないダイコン加工品への応用も進行中という。

 ダイコンの辛みはダイコンに含まれる「グルコラファサチン」と呼ばれる物質の分解産物が原因であることが知られている。今回発見したのは、このグルコラファサチンを合成するためにダイコンの生体内で働いている酵素の遺伝子だ。

 東北大の北柴大泰准教授らが2014年にダイコンのゲノム情報を発表、その成果をもとに農研機構と共同でこの酵素遺伝子の解明・特定に取り組んだ。その結果、グルコラファサチンの合成酵素は多くの植物に普遍的な酸素添加酵素の一種とよく似ていることがわかり、この酵素の遺伝子を「GRS1」と名付けた。

 農研機構はダイコンの中にグルコラファサチンを全く含まない突然変異種を見出していたが、研究グループはその原因がGRS1遺伝子の一部に起きた変異にあることも突き止めた。さらに、GRS1遺伝子に変異が起きているかどうかを簡単に調べられる遺伝子診断技術も開発、煩雑な成分分析なしに植物体内にグルコラファサチンが含まれているか否かを簡単に推定できるようにした。

 今回の成果について、研究グループは「グルコラファサチンの合成酵素遺伝子を世界で初めて明らかにし、育種学、生理学の面で非常に意義がある」と話している。