水素分離用に高性能炭素膜開発―燃料電池車普及に後押しも:NOK/産業技術総合研究所ほか
(2017年3月9日発表)
NOK(株)と(国)産業技術総合研究所とは3月9日、水素エネルギーの運搬・貯蔵が容易な液状化合物「有機ハイドライド」から水素を容易に分離できる高性能炭素膜モジュールを開発したと発表した。次世代自動車として注目される燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーション整備の低コスト化につながると期待している。
水素は燃焼時に廃棄物として水しか出さないため次世代の有力なエネルギー媒体として注目されているが、常温常圧では気体のため運搬・貯蔵に適さない。このため有機ハイドライドの一種「メチルシクロヘキサン」に水素を化学的に固定して液化し、ガソリンスタンドに替わる水素ステーションでトルエンと水素に分離したうえで水素だけを高純度で取り出す技術の確立が望まれていた。
研究グループは、まず水素だけを選択的に透過させる微細な孔を持つ中空糸型の高性能炭素膜を開発。一度の分離で燃料電池自動車用水素の国際規格を満たす水素が得られることを確認した。また、水素ステーションでの運用条件として想定される90℃という温度環境で水素・トルエン混合ガスを供給した場合、500時間以上にわたって安定した分離性能を発揮することがわかった。
そこで、この高性能炭素膜を組み込んだ大型モジュールを試作、実用化に必要な炭素膜製造方法の改善やモジュール構造の最適化に取り組んだ。その結果、毎時1㎥規模の水素精製能力を持つ大型炭素膜モジュールの開発に成功した。一般に膜の性能は大型化すると性能にばらつきや欠陥が生じやすいが、開発したモジュールでは大型化しても炭素膜本来の水素分離性能が維持できることがわかった。
燃料電池自動車の普及には水素ステーションが街中に広く整備されていることが欠かせないが、その整備・運営費に高いコストがかかることが大きな障害となっている。そのため低コストで水素供給が可能な有機ハイドライド型水素ステーションの実現が期待されている。