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ゲノム編集によりキクの性質変えることに成功―品種改良の新たな手法として利用が可能:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年3月10日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は3月10日、ゲノム編集技術を使ってキクの性質を変えることに成功したと発表した。

 近年、DNA(デオキシリボ核酸)切断酵素などを使って特定の遺伝子配列を変えるゲノム編集技術が急速な進展を遂げている。植物の世界でも新品種を効率良く開発する手段や、特定の遺伝子を解析する手段としてゲノム編集技術の利用研究がイネやトマトなどを中心に進められている。

 しかし、キクは、持っている染色体の数が6セットと多い高次倍数性と呼ばれる植物であるためゲノム編集で性質を変えるのが難しい。

 高次倍数性植物では、同じ機能を持つ複数の遺伝子が存在するので、遺伝子一つを変えても性質の変化にまでは至らず複数の遺伝子に変異が導入されてようやく性質の変化が生じるからだ。

 キクは、全ゲノム配列がまだ解読されておらず、それもゲノム編集を難しくする要因になっている。

 農研機構は、遺伝子配列が既に報告されている「蛍光たんぱく質遺伝子」をゲノム編集の標的に使いその遺伝子が複数導入された遺伝子組み換えギクを作り出し、“複数個の蛍光たんぱく質遺伝子”を“キクの複数個の内在遺伝子”に見立ててゲノム編集を行って性質を変えることに成功した。キクの性質をゲノム編集で変えたのは、世界でも初めてという。

 キクは、日本国内の切り花の出荷本数の40%を占める最も生産量が多い花。今回の技術は、キクの新しい品種改良手法として利用が期待される。更に、キク以外のいちごやダリアなどの高次倍数性の園芸植物のゲノム編集技術の開発にも広く役立つものと研究グループは見ている。