日本の重力値の基準を40年ぶりに更新:国土地理院
(2017年3月15日発表)
国土交通省の国土地理院は3月15日、国内各地で測定した重力値の基準を40年ぶりに更新し、「日本重力基準網2016(JGSN2016)」として公表した。重力値とはあまり聞きなれない言葉だが、生活の安全、安心の基盤を裏側でしっかり支える重要な概念だ。地下の活断層の調査や、資源探査、津波や洪水対策のための土地の標高測量、物の重さを測る「はかり」の校正などには、地域ごとの正確な重力値の測定が欠かせない。測定の精度の向上によって今回は全般的に重力値が小さくなった地域が多く、その影響は平均でみると60kgの体重がヤブ蚊数匹分(約0.006g)ほど軽くなったという。
重力は、地球の引力と自転による遠心力によって作られる。重力の大きさである重力値は時間や場所によって異なる。また物の重さも重力の大きさによって変化するため、赤道上の重力は遠心力の効果によって北極や南極より約0.5%小さくなる。
また同じ場所でも、月や太陽の引力(潮汐力(ちょうせきりょく))や火山のマグマ活動によって時間的にわずかに変化する。逆に同じ場所で重力値を継続して観測することによって、火山のマグマの動きなども監視できる。
国内でも緯度の違いによって同じ物でも重さが変わる。例えば沖縄で1kgの金塊(きんかい)が、北海道に持っていくだけで約1g重くなる。しかしこれでは社会が混乱するため、同じものが日本中どこでも同じ重さとして測れるように、国土地理院の測定した重力値を使って各地ではかりを校正している。
新しい重力基準値は、2002年から16年にかけて全国263点で測定した。東日本大震災や熊本地震の巨大地震によって重力が大きくなったり小さくなったりした変化もとらえている。今後、さらに約1万4,000か所の重力値も測定し直すことにしている。