人工光合成材料開発―白金ナノ粒子を生体分子で高効率分散:筑波大学
(2017年3月15日発表)
筑波大学は3月15日、太陽光で水を分解し水素を発生させる新しい人工光合成材料を開発したと発表した。化学反応を促進する触媒作用を持つnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)単位の極微の白金ナノ粒子を、生体分子を利用して炭素原子一層からなるシート状分子の表面に効率よく分散し結合させて作った。新材料は有機色素も光で分解でき、今後の人工光合成研究の進展に役立つと期待される。
筑波大の山本洋平准教授らの研究グループが、ドイツのデュースブルグ‐エッセン大学と共同で開発した。
金や白金のナノ粒子が触媒作用を持つことはよく知られているが、凝集すると効果を発揮しにくくなる。これに対し、山本准教授らはこれまでにアミノ酸が鎖状に結合した生体分子「ペプチド」を用いると、いったん凝集したナノ粒子も再分散化する現象を見出していた。
そこで研究グループは今回、この現象を利用して白金ナノ粒子をシート状の基板表面に効率よく分散させて結合することに挑戦した。基板には炭素原子一層分のシート状炭素分子「グラフェン」の酸化物である酸化グラフェンを用いた。基板表面に白金ナノ粒子を分散させる実験では、ペプチドが基板表面を覆うように広がり、これに白金ナノ粒子が効率よく均一に分散して結合。白金ナノ粒子とペプチド、酸化グラフェンの複合体を構成することがわかった。
この複合体を、亜ジチオン酸ナトリウムを添加した水溶液中に入れて光を照射したところ、水が分解されて水素が発生した。また、有機蛍光色素の光分解に利用したところ、効果的に分解できることがわかった。白金ナノ粒子単体やペプチドなしで作った複合体などでも同様の分解反応は起きるが、新たに開発した複合体を使用した場合の分解効果は際立っていた。
今回の成果は、生体分子・金属ナノ粒子・2次元ナノシートという異なる材料を複合化することで新しい光触媒材料の開発につながることを示せたと研究グループは話している。