肥満関連の褐色脂肪組織を画像化―体外から近赤外の蛍光キャッチ:産業技術総合研究所ほか
(2017年3月20日発表)
(国)産業技術総合研究所など4機関は3月20日、体内で脂肪を燃焼させる褐色脂肪組織を体外から観察する新しい画像化技術を開発したと発表した。体内で褐色脂肪組織に結合し体外から照射した近赤外光で蛍光を発する新造影剤を開発して実現した。高価で大型の装置が必要な従来の画像化技術に比べ手軽に利用でき、肥満に伴う病気の予防・治療法の開発に役立つという。
開発したのは、産総研と(国)国立国際医療研究センター、北海道大学、東京大学の研究グループ。
新造影剤は、炭素原子が六角形の網の目状に結合して直径0.7~4nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の筒状になった炭素分子「単層カーボンナノチューブ(SWCNT)」を利用した。特に直径1nm程度の半導体型SWCNTは、近赤外光を照射されると近赤外の蛍光を発する。さらに近赤外光は生体透過性が高く体内まで入り込みやすい一方、体内の褐色脂肪組織が発した蛍光も体外から観察することができる。
このため、まず半導体型SWCNTの表面を生体になじみやすい水溶性高分子で覆い、褐色脂肪組織に選択的に沈着する造影剤を開発した。マウスにこの造影剤を注入した実験では、造影剤が褐色脂肪組織に選択的に沈着することを確認。さらにマウスの体全体に高輝度LEDで波長730nmの近赤外光を照射し、体外から波長1,000nm以上の蛍光を近赤外カメラでとらえたところ、体内の褐色脂肪組織を鮮明に画像化することができた。
肥満に伴う健康障害「メタボリックシンドローム」との関係が深い褐色脂肪組織は未解明な部分も多く、動物実験で体外から観察する画像化技術の必要性が高い。しかしこれまでは放射性同位元素を体内に入れて画像化する大型で高価なPET-CTしかなく、手軽に体内の褐色脂肪組織を画像化することは難しかった。
今回の成果について、研究グループは「従来に比べて極めて簡単な装置で褐色脂肪組織の造営が高感度、高解像度、非侵襲(ひしんしゅう)でリアルタイム観察ができるようになった」として、褐色脂肪組織の研究、特に肥満解消につながる活性化手法の研究に役立つと期待している。