干ばつに強いイネの実証栽培に成功―遺伝子組み換えで開発:国際農林水産業研究センター/理化学研究所/国際熱帯農業センター/筑波大学
(2017年4月4日発表)
(国)国際農林水産業研究センターと(国)理化学研究所などの研究グループは4月4日、遺伝子組み換えで干ばつに強いイネを開発、実証栽培に成功したと発表した。乾燥への耐性を高める糖の一種を植物体内に蓄積する遺伝子を導入、干ばつ時でも組み換え前の原品種より約2割以上収量が増えることを確認した。今後はアフリカや南米でも栽培試験を進め、世界的な食料安定確保に役立てる。
研究グループには、筑波大学のほか南米コロンビアに拠点を置く国際熱帯農業研究センター(CIAT)も加わった。
遺伝子組み換えに用いたイネは、南米で栽培されている主要な陸稲品種「Curinga」と、同じくアフリカの陸稲品種「NERICA4」。これらの品種に、実験用のモデル植物として知られる「シロイヌナズナ」のガラクチノール合成酵素遺伝子を組み込んだ。ガラクチノールはブドウ糖などが数個結合したオリゴ糖の一種で、植物体内に多量に蓄積されると植物の耐乾性に大きな影響を与えるとされる。
開発した遺伝子組み換えイネを大規模な圃場で複数年にわたって栽培したところ、干ばつの強弱に関係なく単位面積当たりの収量がCuringaの場合に20~157%、NERICA4の場合で17~40%多い系統を見つけることができた。また、乾燥条件下での葉の含水率や光合成能力の維持など乾燥ストレスに抵抗力を発揮するのに欠かせない生理機能が向上していることも突き止めた。
今後はアフリカや南米での現地栽培に挑戦するほか、乾燥時に働く他の遺伝子を導入した品種との交配などを通じてさらに乾燥に強い品種の開発を目指す。