今の15倍もの電気を蓄えられる超高容量な電池を開発―“究極の二次電池”といわれる「リチウム空気電池」で実現:物質・材料研究機構/科学技術振興機構
(2017年4月4日発表)
(国)物質・材料研究機構と(国)科学技術振興機構(JST)は4月4日、共同で“究極の二次電池”として注目されている「リチウム空気電池」の蓄電容量を今のリチウムイオン電池の15倍相当にまで高めることに成功したと発表した。
蓄電容量は、どれだけの電気を蓄えることができるかを表す指標。
蓄電池は、電気自動車の電源や、太陽電池と組み合わせた家庭用の電源などとして今後急速に需要が拡大すると見られている。しかし、今使われているリチウムイオン電池は、優れた特性を持っているものの、蓄電容量が既に限界近くにまで達しているため電気自動車を200km程度しか走らせることができないのではないかという声も聞かれ、新しいタイプの大容量蓄電池の開発が望まれている。
その壁を突破する切り札として期待されているのがリチウム空気電池で、近年研究が急速に進展し、例えば東北大学とJSTの共同研究チームは平成27年にリチウムイオン電池の6倍以上の蓄電容量を持つリチウム空気電池を開発したと発表している。
今回の超高容量リチウム空気電池の蓄電容量は、その2.5倍近い。
リチウム空気電池は、正極、セパレータ、負極を重ねて電解液を入れた構造の二次電池で、負極の金属リチウムが溶け出して正極で空気中の酸素と反応、電気が発生して過酸化リチウムが析出するという仕組み。過酸化リチウムの析出量で蓄電容量は決まり、正極のカーボン材料はできるだけポーラス(多孔質)なものが望ましいとされている。
しかし、一方で過酸化リチウムは絶縁体なため、ごく薄くしか析出させることができず、仮に厚くできたとしてもカーボンの空孔(微細な孔)が析出する過酸化リチウムによって埋め尽くされるとその時点で酸素が通らなくなるので反応が停止してしまう、という問題を抱えている。
今回研究グループは、正極に不織布状のカーボンナノチューブ(CNT)シートを用いてその難題を解決した。
CNTは、炭素原子が網目のように結び付いたチューブ状(筒状)の直径がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーの超微細なカーボン材料。このCNTシートを正極に使ったところ、シートを押し広げて過酸化リチウムが析出し続けて最初200µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)だった厚みが大幅に膨らんで3倍の600µmにまで厚くなり、充電を行うと析出した過酸化リチウムが分解して消え元の厚さに戻ることが分かった。
実験の結果、面積1㎠当たり30mAhという極めて高い蓄電容量を持っていることが確認されたという。この値は、リチウムイオン電池の15倍にあたる。
研究グループは「このような巨大容量が得られたという事実は、従来の考え方では説明が困難で、リチウム空気電池の反応機構の議論に一石を投ずる可能性がある」といっている。