構造物の歪み感知するセンサーシート―インフラ劣化をモニタリング:産業技術総合研究所/大日本印刷
(2017年4月11日発表)
(国)産業技術総合研究所と大日本印刷(株)は4月11日、高速道路橋などインフラの劣化を常時監視するセンサーシートを開発したと発表した。圧電素子と電子回路を微細加工技術で集積化、構造物の表面に貼り付けてひずみを計測する。阪神高速道路での実証実験では、新センサーを複数枚組み合わせることで車両の通過に伴う道路橋のひずみ分布が常時モニタリングでき、インフラ劣化の監視に役立つことがわかった。
開発したセンサーシートは、極薄のひずみセンサー(長さ5mm、幅1mm、厚さ1,000分の3mm)をフレキシブル基板上に配置し、保護フィルム、接着フィルムと一体化、インフラ構造物の表面に容易に貼り付けられるようにした。
センサーシートの心臓部「ひずみセンサー」は、外力が加わってひずむとその大きさに応じて電圧を発生する圧電素子「PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)」と、そのとき発生した電気信号を処理する電子回路を、微細加工技術を利用して一体化して作成した。
ステンレス板の試験体にセンサーシートを貼り付けて実験したところ、試験体を振動させたり曲げたりしたときに亀裂の有無でひずみセンサーからの出力電圧が3~5倍程度異なった。そのため試験体にセンサーシートを複数枚貼って出力電圧を比較することで、どの部分に亀裂などの異常が発生しているかが把握できることがわかった。
阪神高速道路での実証実験でも高速道路橋の変形をひずみ分布としてモニタリングできることがわかった。このため、ひずみ分布の変化を継続してモニタリングできれば、高速道路橋の劣化状態を把握でき、その健全性評価や効率的な点検ができるようになると研究グループはみている。
高速道路橋などの点検は、いまのところ作業員による目視が基本で、亀裂が発見された場合に渦流探傷などより精密な検査をして補修・補強をしている。最近は多くのインフラ構造物が老朽化時期を迎え専門作業員の不足が問題になっている。そのためセンサーを用いた低コストのニタリング技術の開発が待たれている。