悪性の乳がんの発生、転移に関わる新たな仕組みを発見:筑波大学
(2017年4月12日発表)
筑波大学医学医療系の研究グループは4月12日、乳がんの発現率が高い転写因子MAFKとその標的遺伝子のGPNMBを発見したと発表した。従来とは違う新たな仕組みで乳がんを発生し、転移にも関わることを明らかにした。悪性の乳がんの治療や診断につながるとみている。スウェーデンのウプサラ大学、早稲田大学、山梨大学との共同研究の成果となった。
日本の乳がん患者は年間約7万人で、毎年約1万人以上が亡くなっている。その治療には、一般的に手術や放射線治療、薬物療法などがあり、これらを単独かもしくは併用してきた。中でも薬物治療では、3種類の受容体の現れ方からどの薬物を使うかを決めていた。
ところが悪性のトリプルネガティブ型と呼ばれる乳がんは、判断材料にする3種類の受容体がいずれも見つからない(ネガティブ)ために適切な治療薬がなく、さらに転移しやすいなどの問題があった。
筑波大のチームは、トリプルネガティブ型乳がんでは、遺伝子の発現を調整する転写因子MAFKの発現が高く、標的遺伝子のGPNMBがMAFKによって増やされることを見つけた。
そこでマウスや培養細胞を使って、正常な乳腺上皮由来の細胞にMAFKとGPNMBの2つを発現させたところ腫瘍が起こりやすい(がん化する)ことを確認した。逆に乳がん細胞の中で、この2つの動きを抑えたところ、腫瘍や転移にブレーキがかかることを証明した。さらに2つはがん細胞の浸潤と転移にも関わることも発見した。
GPNMBは膜たんぱく質で、細胞の表面に突き刺さったような形をしていることから、治療薬も開発しやすいとみている。