睡眠中に音を聞かせトラウマ記憶弱くする方法を発見―マウスを使った実験で実証、PTSD治療に新たな道:筑波大学
(2017年4月12日発表)
筑波大学は4月12日、マウスの実験で、睡眠中にトラウマ記憶に関連した音を聞かせるとトラウマ記憶が弱められることを発見したと発表した。心の病であるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を心理的な苦痛を伴わずに治す新たな治療法の開発に道を拓く成果として今後の発展が期待される。
地震や事故などに遭って心に深い傷(トラウマ記憶)を負うと、日常生活のあらゆる場面でそのトラウマ記憶が蘇ったり、悪夢に悩まされたりして生活が困難になるPTSDを発症することがある。
PTSDの治療では、辛い記憶を繰り返し思い出さなければならないため精神的な負担が大きく、より患者にとって楽な新しい治療法の開発が求められている。
それに応えようと同大学国際統合睡眠医科学研究機構の坂口昌徳准教授と英国オックスフォード大学の共同研究チームは、夢が睡眠中の記憶の処理に関わっているという先行研究からヒントを得て、睡眠しているマウスにトラウマに関連する音を聞かせたところトラウマ記憶が弱められることを見つけた。
箱に入れたマウスに特定の音を聞かせ、直後に軽い電気ショックを与えると、そのショック以降マウスはその音を聞かせるだけでおびえた反応(恐怖反応)を示すようになる。
実験は、音を聞かせて電気ショックを与えた後、睡眠中のマウスに同じ音を、目を覚ましてしまわない大きさで聞かせ、音を聞かせない場合との違いを調べる方法によって行った。
その結果、睡眠中に音を聞かせたマウスは、音を聞かせなかったマウスよりもおびえた反応が弱まり、さらにノンレム睡眠(深い眠り)中に音を聞かせた場合だけおびえた反応が弱まり、レム睡眠(浅い眠り)時にはそれが生じないというはっきりとした違いが現れることが分かった。
PTSDの治療期間は、短くなってきているものの、それでも3カ月程度はかかり、その間辛い記憶を繰り返し思い出さなければならない。
筑波大は、「心理的な不快感を伴わずに、睡眠中にトラウマ記憶を減弱できたという点で極めて画期的。PTSD患者に苦痛を与えることなく睡眠中に治療できる可能性が示された」といっている。