量子ビーム実験データ可視化システム―自動車用磁性材料の開発を効率化:高エネルギー加速器研究機構/高効率モーター用磁性材料技術研究組合
(2017年4月17日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)と高効率モーター用磁性材料技術研究組合は4月17日、次世代自動車モーター用新規磁性材料の効率的な開発を可能にする磁性材料データベース可視化システムを開発したと発表した。加速器を利用してさまざまな物質を分析した膨大な実験データなどから必要な情報を抽出、新材料開発の効率化に役立つようにした。同研究組合はすでに3月から自動車モーター用の新規磁性材料開発に利用を開始した。
新材料の開発はかつて試作・評価を繰り返す地道な作業だったが、近年は様変わりしている。加速器から出る量子ビームを物質に照射することによって得られるデータを活用、基礎物理学の法則に基づいて数値シミュレーションした結果をもとに新規材料の特性を評価することで、開発の効率化を進めようという考えが主流になってきた。
そこで研究チームは、これまでに蓄積された膨大な実験データや数値シミュレーションのデータから、特定の特性の材料開発に必要な要件を研究者が直感的に把握できるよう可視化するシステムを開発した。高速データベースに既存のビッグデータ解析用システムや大量のデータ群から情報科学的手法を用いて新しい知見を引き出す新たな材料設計技術「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」などを組み合わせ、インターネットのウェブ上で高速に扱えるようにした。
これまでは、研究者が独自にプログラムを作って対処してきたが、その手間が省けるという。このため従来33時間かかった解析が、新システムを利用することで1時間以下に短縮できた。また、高い磁気特性を持つ材料に必要な要件を抽出し可視化することで、材料内部の磁気構造を把握することも可能という。
研究チームは今後、さまざまな実験データをシステムが自動的にデータベース化する機能の開発や、材料特性予測機能などを取り入れる計画だ。また「将来的には一定の条件で実験データを公開し、データを採った研究者には役に立たないと考えられていたデータ群から重要な材料データを抽出するデータマイニングも可能にしたい」といっている。