ミトコンドリアの活動の理解に重要な手掛かり―硫黄修飾の新たな反応機構を解明:北海道大学/産業技術総合研究所
(2017年4月25日発表)
北海道、東北大学、(国)産業技術総合研究所などの生命・物質系研究者のグループは4月25日、細胞のエネルギーを生産しているミトコンドリアの生産制御メカニズム解明につながる新たな手掛かりを見出したと発表した。
ミトコンドリアの活動については、転移RNAへの硫黄付加反応である硫黄修飾との関連が深いことが知られ、真核生物の細胞質で硫黄修飾を行う酵素が同定されていた。しかし、その詳細な反応機構はこれまで不明だった。
研究グループは今回、硫黄修飾の一種である2-チオウリジン修飾という反応に関わっている硫黄修飾酵素TtuA(2-チオウリジン合成酵素)を対象に、完全無酸素下で分光学、生化学、X線結晶構造解析による構造機能解析を試みた。
その結果、このTtuA酵素は、酸素に接すると崩壊する不安定な「鉄硫黄クラスター」という因子を用いて硫黄を転移することを見出した。TtuAは鉄硫黄クラスターの存在する場合のみRNAへの硫黄修飾活性を示すことから、鉄硫黄クラスターが2-チオウリジンの合成に必須であることが証明されたという。
細胞質における硫黄修飾の生合成機構の一端を明らかにした今回の研究成果は、ミトコンドリアのエネルギー生産を制御する機構を理解する重要な手掛かりになることが期待されるとしている。