糖尿病の発症抑制も―脂肪酸のバランス制御で:筑波大学/日本医療研究開発機構
(2017年5月2日発表)
筑波大学と(国)日本医療研究開発機構は5月2日、体のエネルギー源になる脂質の主要構成物質「脂肪酸」のバランス異常が糖尿病を引き起こすと発表した。バランス変化には体内で特定の化学反応を促す脂肪酸伸長酵素「Elovl6」が重要な役割を果たしており、その働きを抑えることで糖尿病の発症を抑制できることも突き止めた。糖尿病の新しい予防法や治療法の開発につながると期待している。
筑波大・医学医療系の島野仁教授、松坂賢准教授らの研究グループが日本医療研究開発機構の支援事業などの一環で明らかにした。糖尿病は肥満に伴う脂肪酸の代謝異常や臓器への過剰蓄積によって起きることは知られていたが、脂肪酸の種類や組成がどう関係しているかは未解明だった。
研究グループは、脂肪酸の一つであるパルミチン酸(C16H32O2)が体内で別の脂肪酸のステアリン酸(C18H36O2)に変化していく際に働く酵素Elovl6に注目。この酵素の働きを肥満・2型糖尿病マウスで人為的に欠損させた場合に何が起きるかを調べた。
その結果、酵素の働きを欠損させたモデルマウスは、肥満に影響されることなく糖処理能力の異常や高血糖の改善が進み、血糖値を正常に保てることを突き止めた。血糖値を下げるインスリンを分泌するすい臓のβ細胞が増殖するとともにその細胞死も減って、インスリンの分泌量が増大し、血糖値が低下したためだ。またパルミチン酸によって引き起こされるβ細胞の炎症が抑制されることなどもわかった。
これらの結果から、酵素Elovl6の働きを抑えられれば肥満に伴う代償性インスリン分泌を維持でき、糖尿病を予防・改善できると考えられるという。