マイクロRNAが妊娠中の胎盤形成を促進―マウスを使って実験的に証明:理化学研究所
(2017年5月3日発表)
(国)理化学研究所は5月3日、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる小分子RNA(リボ核酸)が妊娠中の胎盤形成を促進することをマウスを使って実験的に証明したと発表した。
マイクロRNAは、ゲノム(全遺伝情報)上に存在し、2000年代に入ってから研究が急速に進み、様々な生物が持っていて遺伝子の発現を調節していることが分かってきている。
人間やマウスのゲノム上には、2,000個ものマイクロRNA遺伝子が存在するといわれ、一部のマイクロRNA遺伝子はゲノム上でそれが連続して連なったクラスター構造を取っている。マウスやラットに存在する「Sfmbt2マイクロRNAクラスター」の遺伝子数は、72個に及ぶと予測されている。そのマイクロRNAのホスト遺伝子(本体の遺伝子)であるSfmbt2遺伝子は、妊娠中の胎盤形成で重要な役割を果たしていることが既に明らかになっている。
しかし、「Sfmbt2マイクロRNAクラスター」の役割や発現の様式は、これまで明らかになっていなかった。
そこで、理研バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室の研究チームは、ヌクレアーゼ酵素(核酸分解酵素)を使って遺伝子を改変するゲノム編集技術により「Sfmbt2マイクロRNAクラスター」を欠失したマウスを作ってその役割の解明に取り組んだ。
通常、哺乳類は、受精により母親と父親から同じ遺伝子セットを持つ染色体を1組ずつ受け継ぐ。この両親から受け継いだ1対の遺伝子セットをアレルというが、実験の結果、「Sfmbt2マイクロRNAクラスター」が父親由来のアレルのみから発現する刷り込み遺伝子であることが分かった。
また、父親由来のアレルが欠失したマウスにおいて、妊娠中に一部の胎仔(たいし:動物の腹の中の子)が死亡したり、誕生しても体重が軽いことが明らかとなり、期間全体を通して胎盤が小さく、妊娠中に胎仔が十分な大きさまで育たないことが判明。マイクロRNAが妊娠中のマウスの胎盤形成に関わっていることを実験的に証明したという。
開発したSfmbt2マイクロRNAクラスター欠失マウスは、人の胎盤異常の臨床モデルとしての利用が期待されると理研ではいっている。