次世代有機EL用発光材料の発光メカニズムを解明―希少金属不要の低コスト・高効率デバイス実現へ:産業技術総合研究所/九州大学
(2017年5月11日発表)
(国)産業技術総合研究所と九州大学の共同研究グループは5月11日、次世代の有機EL素子の発光材料として注目されている、「熱活性化遅延蛍光(TADF)」を放出するTADF分子の発光メカニズムを解明したと発表した。新たな設計指針を提供する成果で、次世代素子実現への貢献が期待できるという。
有機ELは液晶やプラズマディスプレーなどに代わる新たな表示デバイスや照明用光源として応用開発が進んでいる素子。有機分子が電流によってエネルギーの高い励起状態になり、それがエネルギーの低い基底状態に戻る際に発光する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)現象を利用している。
TADFは室温の熱エネルギーの助けを受けて有機EL分子が放出する蛍光のことで、このTADF発光による蛍光を利用すると、現在市販されている有機ELディスプレーにとっては不可欠なイリジウムや白金などの希少金属を使わずに高い発光効率を実現できることから、有機ELの低コスト化、高効率化の切り札になると注目されている。ただ、発光メカニズムの詳細は不明だった。
共同研究グループは、先に九大が開発したTADF分子を、励起状態における材料の光吸収を詳細に解析できるポンプ・プローブ過渡吸収分光法という産総研の開発手法を用いて調べた。その結果、TADFの発光メカニズムが詳しく判明し、発光効率を高める分子構造の特徴を突き止めることに成功した。
今後は過渡吸収分光装置をさらに高度化するなどして観察を深め、設計指針の構築を進めたいとしている。