光でほどけるらせん状人工ナノ線維の開発に成功:千葉大学/高エネルギー加速器研究機構
(2017年5月10日発表)
千葉大学大学院工学研究科の矢貝史樹准教授らの研究チームは5月10日、光の当て方によってらせん構造と、ほどけて直線状に変わる、不思議な人工ナノ線維の開発に成功したと発表した。生物の機能を高度なレベルで模倣した人工微小材料で、将来は人体の病巣部分を狙って薬剤を送りこんだり、体内物質を取り込んで排出したりの応用が期待される。
人体などの細胞には、運動、分裂、制御や、筋収縮の働きをする線維状ナノ構造体と呼ばれる微小線維がある。これらは主にたんぱく質のアクチンが、らせん状に結合して作られる。
今回の新しい人工ナノ線維は、光を当てると折れ曲がる性質を持ったアゾベンゼン分子が結合してできた。アゾベンゼンとは2個のベンゼン環が窒素の二重結合(アゾ基)によってできた有機分子。
この分子を水素結合によって6個集め、タンポポの花のような放射形(ロゼット)にすると、それが次々に重なってらせん状のナノ線維(超分子ポリマー)を自発的に作ることを発見した。
らせん状ナノ線維に紫外線を当てると、ロゼットのねじれが解消してほぼ直線状の重なりに変化し、可視光を当てると今度はらせん状に自在に変化させることができる。
ナノ線維の太さは10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、長さ2~10μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m )で、らせん構造から直線状への変化は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のX線装置で確認した。
分子より少し大きなサイズの超分子ポリマーを、光を当てることで簡単に操作できたのは画期的な成果。将来は人体内での薬剤の運搬など様々な医療応用が可能になるとみている。