無数の超微細な穴を持つ新ロジウム触媒を開発:物質・材料研究機構
(2017年5月19日発表)
メソポーラスロジウムの電子顕微鏡像 スケールバーのサイズは、500nm
画像:物質・材料研究機構
(国)物質・材料研究機構は5月19日、早稲田大学など国内外の研究機関との国際共同研究で内部に無数の超微細な穴(空間)を持った「メソポーラスロジウム」と呼ぶロジウムのメソ多孔体を開発したと発表した。NO(一酸化窒素)を分解浄化するすぐれた機能を持っていることから新ロジウム触媒として利用が期待される。
内部に大きさが数から数十nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の均一で規則的な細孔を持つナノ物質のことをメソ多孔体といい、特に金属のメソ多孔体はこれまでにない新たな材料として注目を浴びている。
IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、直径2nm以下の細孔をマイクロ孔、同2~50nmの細孔をメソ孔、同50nm以上の細孔をマクロ孔と定義しており、メソ孔を持ったメソポーラスシリカなどが報告されているが、金属のメソ多孔体は電気伝導性が高く無機酸化物系とは異なる分野への利用が考えられている。
同機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の山内悠輔グループリーダーらの国際共同研究チームは、金属のメソ多孔体作りに取り組み、世界で初めて高品質な金属メソ多孔体が作れることを明らかにしているが、今回その一環としてロジウム触媒になるメソ多孔体「メソポーラスロジウム」の開発に成功した。
ロジウムは、自動車排ガス中のNOを除去する触媒やメッキなどに使われている産業上重要な希少元素だが、非常に高価なことからいかにして使用量を減らすかが研究の焦点になっている。新ロジウム触媒のNO還元活性は、市販のロジウム触媒を上回ることを確認している。
作り方は、①ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルのブロックコポリマー(共重合体)を水溶液中で均一なサイズの球状のミセル(多数の分子の集合体)にする、②この溶液にロジウムを含んだ塩化ロジウムナトリウムを溶かし込む、③その後、化学還元法によってロジウムを析出させる、というもの。
ロジウムのナノ構造体化は難しく、細孔をロジウム中に形成するのは至難の業とされていたが、その壁を破った。今回の製法を使えば、ミセルサイズに応じた細孔を粒子中に作り出すことができるという。
物材機構は「金属にナノ空間を形成し、活性を向上させようという指針はこれまでの触媒設計の概念にはなく、今後あらゆる方面で注目されると期待している」といっている。