ダイヤモンド論理回路を開発―過酷環境で使える集積回路実現に一歩:物質・材料研究機構
(2017年5月31日発表)
(国)物質・材料研究機構は5月31日、半導体基板としてダイヤモンドを用いた論理回路チップを世界で初めて開発したと発表した。シリコンなど従来の半導体基板を使った集積回路に比べ高温や放射線などにさらされる過酷な環境下で使え、高速・高出力化が可能なダイヤモンド集積回路を実現するための第一歩になるという。
開発したのは、3mm角の単結晶ダイヤモンド基板上に二種類の金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)を形成した論理回路チップ。論理回路を構成するためにはDモードとEモードと呼ばれるタイプの異なるMOSFETを同時に形成する必要があるが、今回初めてそれらを同時にダイヤモンド基板上に形成することに成功した。
MOSFETは素子の一部に一定の電圧(しきい値電圧)をかけることで電流を制御するトランジスタだが、試作した論理回路チップによる動作実験では二種類のMOSFETが正常に機能した。この結果、負荷電圧によって電流の遮断状態(オフ)と伝導状態(オン)を切り替える正常なスイッチ動作をして論理回路として働くことが確認できた。
これまで二種類のMOSFETを同一のダイヤモンド基板上に作成することは困難だったが、同機構はダイヤモンド基板の表面にある炭素原子に水素を結合させた水素終端ダイヤモンドの性質をうまく利用するなどして同時に作成できるようにした。
今回の成果について、同機構は「ダイヤモンド論理回路は高温・放射線・宇宙環境などの過酷環境条件においても安定に動作する集積回路への応用が期待される」として、産業分野での利用拡大につながるとみている。