アスパラガス茎枯病の抵抗性に関与する遺伝子群を特定―最も被害が大きい病害防止に向け明るい成果:東北大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2017年6月1日発表)
東北大学大学院生命科学研究科、(国)農業・食品産業技術総合研究機構などは6月1日、共同で食用アスパラガスの栽培で最も被害が大きい病害である「アスパラガス茎枯病(くきがれびょう)」の抵抗性に関与する遺伝子群を特定したと発表した。いまだ実現していない茎枯病抵抗性アスパラガスの開発に役立つことが期待される。
アスパガス茎枯病は、茎枯病菌(糸状菌)によって起こる難防除病害。梅雨の頃から発病が始まり、感染した茎には黒い斑点がたくさんできて枯れたり折れたりする。
現在のところその茎枯病に抵抗性を持つ品種は無く、薬剤による防除に頼るしか手段が無い状況にある。
このため、その対策として近年茎枯病に抵抗性を持つハマタマボウキという日本固有のアスパラガス近縁野性種の活用が注目され、アスパラガスとハマタマボウキとの交雑(異種交配)によって茎枯病抵抗性食用アスパラガスを実現しようという研究が進められている。
今回の研究は、香川県農業試験場、九州大学大学院農学研究院、九州大学熱帯農学研究センターが参加して茎枯病菌の感染によって発現が誘導される遺伝子群を食用アスパラガスとハマタマボウキとで網羅的に比較解析することにより、ハマタマボウキが持っている茎枯病抵抗性に関与していると考えられる遺伝子群の特定(断定すること)を試みたもの。
その結果、茎枯病菌感染によって発現誘導される遺伝子として1,027個が特定された。
農研機構は「茎枯病抵抗性アスパラガス品種が育成されると、現在行われている殺虫剤の散布回数を減らすことができ、国産アスパラガスの生産コストと生産労力を劇的に削減できる可能性がある」といっている。