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カーボンナノチューブ用い電磁波遮蔽(しゃへい)能の高い塗料を開発―多様な材質、複雑な形状、高温環境にも適応:産業技術総合研究所

(2017年6月12日発表)

 (国)産業技術総合研究所は612日、単層カーボンナノチューブを用いて、高い電磁波遮蔽性能を持つ塗布膜形成塗料を開発したと発表した。得られる塗布膜は、耐熱性や長期安定性に優れ、複雑な形状部分や可動部分にも使えるため、多様な電子機器の電磁波の遮蔽が期待できるという。

 電子機器の誤作動を引き起こす電磁波の遮蔽に、電子機器を金属製の筐体(きょうたい)に収納する従来法に代わり、最近、樹脂やゴム製の筐体などに電磁波遮蔽塗料を塗布する方法が注目されている。

 そうした塗料の一つである銀系塗料は遮蔽能には優れるが、用いている有機溶剤に物質を溶かす性質があり、塗布可能な基材が制限される。もう一つの水性のカーボンブラック系塗料は塗布しやすい半面遮蔽能が低いという弱点がある。

 産総研は先に、ゴム材料の中で単層カーボンナノチューブ(SGCNT)が網目状に広がり分散する現象を利用して、高い電磁波遮蔽性能を持つSGCNTゴム複合材料を開発している。今回はここで用いたSGCNT分散技術を活用し、高い電磁波遮蔽能を持つSGCNT系水性塗料を開発した。

  この塗料は、塗布できる基材の幅が広く、バーコート法、スプレー法、ディップ法などの様々な塗布方法が利用できる。平面だけでなく複雑な形状の基材に塗布膜を形成でき、高温での耐久性もある。また、実用上必要な電磁波遮蔽性能は99%(20㏈(デシベル))以上カットだが、新塗料で得た塗布膜は99.9%の性能がある。

  高温環境で使用される自動車用ワイヤハーネスや、可動部や複雑形状を持つ産業用ロボットなど、様々な分野での電磁波遮蔽対策への利用が期待できるという。