特定外来生物アルゼンチンアリ、都心で根絶―数理統計モデルを用いた根絶評価手法を開発し宣言:国立環境研究所ほか
(2017年6月13日発表)
アルゼンチンアリ(撮影:坂本佳子)
(国)国立環境研究所は6月13日、数理統計モデルを用いた根絶評価手法を開発し、この手法による評価の結果、東京都大田区内において防除を試みていた特定外来生物アルゼンチンアリは「根絶した」と発表した。これまで感覚的であった根絶の成否を統計学的根拠に基づいて判断できるようになったという。
開発した評価手法は、モニタリング調査データを数理統計モデルを用いて解析し、根絶確率を定量的に推定するというもの。
防除試験の対象となったアルゼンチンアリは南米が原産で、運搬物資に紛れて世界中に広がり、わが国では1都2府9県において定着が確認されている。
生態系への被害の恐れがあることから環境研と環境省はフマキラー(株)の協力を得て、東京都大田区内の2カ所で防除試験に取り組み、薬剤を用いた防除活動を約4年間続けた。その結果、モニタリング調査で1個体も確認されなくなり、根絶成功の可能性が示された。
しかし、この観察結果で根絶と判断して防除をやめると、見落とした残存個体から再度増殖する恐れがあるため、環境研は今回残存する確率を推定する方法を考案し、それに基づいて根絶を判断するようにした。
粘着トラップを使い、毎月3日間採集した59か月分のモニタリングデータをもとに、根絶評価モデルを開発、トラップによって発見された検出確率、および投薬によって死亡した除去確率を算出し残存確率の推移を示した。また防除コストが最小となる防除終了時期の推定も行った。
その結果、根絶の判断は防除コストの観点からは残存確率5%水準が最適との結果になったが、再増殖した場合の防除コストを予測できないことなどから、根絶確認のためには残存確率1%未満の採用が確実と判断され、1%水準を根絶成功の基準とした。
統計学的根拠に基づいて根絶宣言を行ったのはこれが初めての例で、環境研は今回の成果を踏まえてアルゼンチンアリ防除事業を順次拡大、国内からの根絶を目指すとしている。