寒冷地向け製パン用小麦新品種―耐病性など優れた特性:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年6月13日発表)
(国)農研機構の東北農業研究センターは6月13日、東北・北陸地方など寒冷地での栽培に適した製パン用の小麦新品種「夏黄金」を開発したと発表した。寒冷地用としてすでに栽培されている「ゆきちから」に比べ病気に強いうえ、パン生地にしたときの特性も優れており、食パンを始めさまざまな種類のパン製造に使える。2年後には小麦粉や加工品として本格販売される予定だ。
製パン用小麦は、パン生地にしたときのちぎれにくさなどから「パン生地の力」を定義、力が強いほど製パン用として優れているとされる。夏黄金は含有たんぱく質の量は既存のゆきちからと同程度だが、その組成を改良してゆきちから(準強力小麦)より1ランク高い強力小麦にできた。このため製造できるパンの種類も広がり、これまで難しかった食パン製造などにも使えるという。
また、製パン用の小麦は収穫期に雨が続くと収穫前に発芽して小麦粉の品質悪化につながるが、夏黄金はゆきちからより発芽しにくく、赤かび病や縞萎縮病にも強い。一方、成熟時期や収穫量はゆきちからと同程度で栽培の仕方もほとんど同じという。寒冷地では雪害が問題となるが、連続積雪日数(根雪期間)が100日以内の地域なら栽培可能で、それ以上根雪が続く場合は融雪剤などが必要になる。
宮城県はすでに夏黄金を奨励品種に採用した。これまでに実施した栽培試験でもゆきちからより1割程度収量が多く赤かび病にも強いとして、今後400ha(ヘクタール)程度の栽培を予定している。