加工用レーザーの出力制御システムを開発:産業技術総合研究所
(2017年6月14日発表)
(国)産業技術総合研究所は、製造現場で加工に使う高出力レーザーの出力を安定化させる制御システムを開発したと、6月14日に発表した。
高出力レーザーは、自動車ボディーの鋼板の溶接や、炭素繊維強化プラスチックの切断、切削などで盛んに使われている。しかし周囲の温度変化やレーザーの予熱状態などで出力が変動する難点があり、これが加工の精度や歩留まりに影響するため出力の安定化が望まれていた。
レーザーや可視光などの光は、プリズムを通る時にある角度以上で全反射してしまう。その過程でプリズム底辺の外側の極小空間(入射光の波長程度、数百nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)に、ごくわずかに染み出し、再びプリズム内部に戻って反射光となる特殊な光がある。
プリズムの底辺に別のプリズムを近づけると、染み出した特殊な光の一部は近づけた方のプリズムに流れ、一部は元のプリズム内に戻って反射光になることが知られている。
この原理を応用すれば、2個のプリズム間の距離を微調整して反射光の出力を制御できることに気づいた。
反射光の出口にモニターをつけ、波長が1.1µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m )、2kW/cm2 の高出力レーザーを数分おきに変動させたところ、安定した出力が得られることを実証した。
今後、システムを小型化し、加工装置に内蔵できるように改良し、実用化を進めたいとしている。