高効率GaAs太陽電池に新製造技術―大型化で低コスト化に道筋:産業技術総合研究所
(2017年6月13日発表)
(国)産業技術総合研究所は6月13日、ガリウムヒ素(GaAs)半導体を用いた次世代太陽電池を低コスト化する新製造技術を開発したと発表した。複雑な多層構造を持つGaAs半導体膜を連続的に作れる装置を開発、世界トップレベルの発電効率20.3%の太陽電池が作れることを確認した。GaAs太陽電池の低コスト化に欠かせない成膜面積の大型化・大口径化に道筋がついたとしている。
産総研の菅谷武芳研究チーム長らが、大陽日酸(株)と東京農工大学と共同で開発した。
GaAs太陽電池は、波長域の異なる光を吸収する複数の太陽電池を積層させた多接合型。シリコン半導体を用いた従来の太陽電池が単接合型で、吸収できる光の波長帯が限られているのに対し、発電効率の大幅な向上が期待できる。
GaAs太陽電池の製造には一般に有機金属気相成長(MOVPE)装置が使われるが、高価な有機金属を用いるため製造コストが高くついた。一方、今回の技術と同様に安価な純金属を使えるために低コスト化が可能な縦型ハイドライト気相成長(HVPE)装置を使う試みも米国で進んでいるが、商用機に必要な成膜面積の大型化は難しいとされていた。
研究グループは今回、HVPE装置を横に寝かせて設置する水平置き方式に着目。大陽日酸と東京農工大が窒化ガリウムの基板作り用に開発してきた水平置き縦型HVPE装置の技術をもとに、GaAs太陽電池向けの商用機開発を目指した。水平置きにすると装置内部のガスの熱対流や温度が制御しやすく、大型化・大口径化にも有利とされている。
装置を試作、GaAs半導体の成膜実験をしたところ、明確な界面を持つ多層構造の膜が実現できた。さらにGaAs太陽電池を試作して電流・電圧特性を調べた結果、米国が縦型炉を用いて作成したGaAs太陽電池の発電効率(20.6%)とほぼ同等の20.3%となり、世界トップレベルの性能が得られることがわかった。
研究グループは、今回の成果で「産業用に使用されている4インチ以上の大口径化が可能になる」としている。今後はさらに低コストGaAs太陽電池と安価なシリコン太陽電池を組み合わせた低コスト・高効率多接合太陽電池の実現を目指す。