プラスチックに高品質セラミック膜コーティング可能に―金属などとのプラスチックの代用拡大へ:産業技術総合研究所/荒川化学工業
(2017年6月16日発表)
(国)産業技術総合研究所は16日、プラスチック基材に高品質のセラミック膜を高効率でコーティングする技術を、荒川化学工業(株)と共同で開発したと発表した。プラスチックの表面硬度や耐摩擦性を飛躍的に高めることができ、車の部材やスマートフォンの筐体(きょうたい)などへの応用が期待できるという。
新技術は、産総研独自の常温製膜技術であるエアロゾルデポジション法(AD法)と、荒川化学工業の有機無機ハイブリッド膜形成技術とを組み合わせて実現した。
AD法はセラミック微粉末を常温で基板に吹き付けることにより、加熱することなく緻密で高透明、高強度、高密着力のセラミック被膜を形成する手法。ただプラスチック基材に適用した場合には十分な密着性、緻密性、透明性が得られず、また、セラミック膜に多数のクラックが発生するなどの問題を抱えていた。
プラスチック材料を金属やセラミックに置き換えるための性能向上法としては光硬化ハードコート、ゾルゲル法、スパッタ法なども試みられてきたが、期待した性能は得られていない。
産総研は今回、プラスチック基板上に直接ADセラミック膜を形成するのではなく、中間層として荒川化学の有機無機ハイブリッド膜を形成し、その上にADセラミック膜を被膜する方法を試みた。
その結果、プラスチック基材の表面硬度、耐摩擦性が飛躍的に向上、また、実用レベルの密着性、緻密性、透明性が認められた。PETフィルムに高品質のセラミック膜を形成したり、ポリカーボネートなどのプラスチック成型物に透明で硬度の高いセラミック膜を形成できる。
今後は、この技術に関心のある企業を募り、共同でセラミック膜コーティングしたプラスチック部材などの実用化を目指すとしている。