台風の最も風速の強い領域の微細構造を解明―スーパーコンピューター駆使して明らかに:気象研究所/東京大学/海洋研究開発機構
(2017年6月19日発表)
(国)気象研究所、東京大学、(国)海洋研究開発機構は6月19日、共同で台風の最も風速が強い領域の風の微細構造を明らかにすることに初めて成功したと発表した。スーパーコンピューターを使ったシミュレーションによって得られた成果で、台風の詳細な構造の解明や被害を少なくするのに役立つものと期待される。
台風は、時間的・空間的に大きく変動する1km以下のスケールの微細構造を持ち、その微細構造による強風が被害を大きくする。
しかし、強風の実態を把握する観測の機会や、高性能な観測手段が限られていることから台風の微細構造は解明されていない。
こうしたことから観測の遅れを補う手段としてシミュレーションによる研究が期待されているが、台風の微細構造を解明するような計算は普通のコンピューターでは能力的に難しい。
今回の共同研究は、(国)理化学研究所の計算科学研究機構(神戸市)にあるスパコン「京(けい)」を駆使して行われた。
「京」は、スパコンの計算速度を競う国際ランキング「HPCG」で昨年と今年連続して世界第1位を獲得しており、その世界最速の「京」を用いて台風全体をこれまでは不可能だった100mという高分解能で解像(計算)し、海上の台風の最も風速の強い領域の風の微細構造を初めて明らかにした。
その結果、気流がロール状(ロール構造)になって上昇と下降を繰り返す強風域が3種類あることが分かった。
これまでも台風の壁雲(台風の目を囲うように形成される雲)の外側にロール構造があることは知られていたが、壁雲に近い所にも別の構造を持つ2種類のロール構造が見つかった。
こうした新しいロール構造を発見したのは、世界でも初めて。
研究グループは、このロール構造により、平均風速の4割にも達する風速変動を伴う突風が局所的に吹いていることが計算から分かったといっている。