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においで特定情報かぎ分ける新手法―お酒のアルコール度数も推定:物質・材料研究機構

(2017年6月20日発表)

 (国)物質・材料研究機構は620日、においからお酒のアルコール度数(エタノール濃度)を推定することに成功したと発表した。超小型センサーとコンピューターによる機械学習などの技術を組み合わせて度数を数値化する手法を開発、赤ワインや芋焼酎、ウイスキーで精度よく推定できることを確認した。果物の成熟度や人間の健康状態がにおいで推定できるようになる可能性もあると期待している。

 においは一般的に数百から数千種類にも及ぶ化合物「におい分子」が混ざり合った複雑な気体。その構成成分や濃度などを定量的に検出するには、ガスクロマトグラフィーなどの大きな装置で分析する必要があった。これに対し今回、より手軽に、においからアルコール度数や人間の健康状態、果物の成熟度などの特定情報を高精度に推定する手法の開発に取り組んだ。

 同機構が注目したのは、①におい分子が吸着すると形状が変化する膜の情報を電気信号でとらえる超高感度小型センサー、②膜表面に塗布してにおい分子を吸着させる機能性感応材料、③センサーがとらえた信号からアルコール度数など特定情報を分析・推定するコンピューターによる機械学習――という3つの要素技術。センサーと機能性感応材料にはそれぞれ4種類を使い、これらの組み合わせを最適化してお酒のにおいからアルコール度数を推定できるようにした。

 実験では、アルコール度数の異なる32種類の液体試料を用意、それらのにおいを順次測定した。このときに得られた電気信号のパターンをアルコール度数とその都度対応付けし、コンピューターに繰り返し学習させた。その結果、学習に使用していない赤ワインと芋焼酎、ウイスキーのアルコール度数を高い精度で推定できた。

 新手法について同機構は「基本的にどのようなにおいに対しても適用できる」としている。今後は食品の鮮度や品質管理への応用のほか、がんの進行度合いとにおいとの関連付け、呼気による病気診断、環境モニタリングや防災への応用など、さまざまな可能性を検証する予定。