東西短縮の原因はフィリピン海プレートの運動―日本列島の地殻変動の謎解明:産業技術総合研究所
(2017年6月29日発表)
アナログ模型で明らかにした日本列島の地殻変動の力学的枠組みの概念図 ©国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)
(国)産業技術総合研究所地質情報研究部門の高橋雅紀研究主幹は6月29日、第四紀の日本列島の東西短縮地殻変動の原因が、これまで考えられていた太平洋プレートの運動ではなく、フィリピン海プレートの運動であることが分かったと発表した。日本列島を取り巻くプレート運動と、日本列島で起きている地殻変動との関係を説明する知見が得られたとしている。
本州はおおよそ300万年前に始まった東西方向の短縮地殻変動によって、かつての海底が隆起し広い範囲が陸化して生まれ、現在もその範囲は東西方向に圧縮されている。
この東西短縮地殻変動についてはこれまで、西に移動する太平洋プレートの沈み込み運動によってもたらされたと考えられてきたが、太平洋プレートの運動は4,000万年以上にわたってほぼ一定だったことが知られており、太平洋プレート運動原因説には疑問も抱かれていた。
高橋研究主幹はプレートの動きを模型で再現する実験をし、地殻変動を調べた。房総半島の東方沖には、日本海溝、伊豆-小笠原海溝、南海トラフの三つの海溝が一点に会合する世界で唯一の三重会合点が存在する。この三重会合点に着目し、その周辺の海溝の変化とプレートの動きとの整合性などを模型上で求めた。
その結果、日本列島(本州)の東西短縮地殻変動やその変動の一端を示す内陸地震は、太平洋プレートの沈み込み位置、つまり日本海溝の移動によって引き起こされているが、東北日本がユーラシア大陸本体とは別個に動くことを踏まえると、日本海溝の西向きの移動はフィリピン海プレートの運動につれて引き起こされており、日本列島の東西短縮地殻変動の原因は太平洋プレートの運動そのものではなく、フィリピン海プレートの運動であると結論付けられたという。
今後は日本列島周辺における様々な現象がこの説をベースに説明できることを示したいとしている。