原子・分子レベルの単層膜作りに新技術―短時間・簡便化で工業化に道:物質・材料研究機構
(2017年7月1日発表)
(国)物質・材料研究機構は7月1日、炭素原子が平面状に結合したグラフェンなどの二次元物質を一分程度で隙間なく配列して単層膜にする技術を開発したと発表した。単層膜はエレクロニクスや環境、エネルギー分野で優れた機能を発揮する新材料として注目されているが、作成に複雑な操作と時間が必要だった。新技術はこれらの問題点を解決、工業化に道をひらいた。
単層膜は原子や分子レベルの薄さを持ち、既存の材料では実現できない高速電子伝導性や高誘電性などを発揮、エレクトロニクスの新材料として期待されている。また、高い触媒性能なども実現可能で、環境・エネルギー分野でも注目されている。
研究グループは、二次元物質として酸化グラフェンや酸化チタンナノシートなど、多様な組成や構造、機能性を持つ4種類の物質を対象に単層膜作りに取り組んだ。二次元物質は厚さ1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)前後の分子レベルで、横方向にはその数百倍以上の広がりを持つ薄い板状をしている。新技術では、これを適度の粘性を持つ有機溶媒中に分散したコロイド溶液にし、直径3cm程度の円形のシリコン基板やガラス基板上にたらして毎分1,000~5,000回転させる。
実験では、溶液は基板上で均一に広がり1分程度で乾燥して膜になった。この膜を電子顕微鏡で調べたところ、基板表面はタイルが並ぶようにほとんどすき間なく二次元物質で覆われ、二次元物質が一層分だけの単層膜ができていた。単層膜は全体の95%以上の面積を占め、表面の粗さは0.5nm程度となり、高品質の単層膜ができていることがわかった。この工程を繰り返すことで、単層膜を何層も重ねた多層膜も作れる。
従来、単層膜を作るにはLB(ラングミュア・ブロジェット)法と呼ばれる手法が用いられているが、操作が複雑で熟練技術が必要だった。時間も1時間程度かかり、工業化は難しかった。
研究グループは、新技術が「従来技術の問題点を解決し、簡便な操作で短時間の成膜を可能にする」として、低電圧動作トランジスタや超小型コンデンサーなど、新しいデバイス開発に役立つと期待している。