エタノールが植物の耐塩性を高めることを発見:科学技術振興機構/理化学研究所
(2017年7月3日発表)
(国)理化学研究所は7月3日、エタノールが植物の耐塩性を高めることを発見したと発表した。作物の成長や収量に被害をもたらす塩害は、世界のかんがい農地の約20%で発生している。酒類などに含まれる身近なエタノール(エチルアルコール)が役立つことは、被害の多い途上国の農業にとって朗報となりそうだ。
植物は高濃度の塩によるストレスにさらされると、根から水分を吸収しにくくなる性質がある。さらに光合成が低下したり、活性酸素が蓄積して細胞死が引き起こされたりすることもある。
研究グループは、実験生物であるシロイヌナズナを使ってエタノールを与えたものと、与えないものに分けて遺伝子発現の違いを調べた。
その結果、高い塩のストレスを受けた際に、活性酸素を排除するように働く遺伝子群が、エタノールを与えたグループで増加することがわかった。
また活性酸素の一種の過酸化水素を消すアスコルビン酸ペルオキシダーゼの活性も増加することがわかった。
イネでもエタノールを与えると効果があることを確かめた。人口が増え続けている途上国の食糧対策や、東日本大震災のような巨大津波被害による沿岸農業の塩害対策にも役立つものと見ている。