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正方形型炭素分子を初確認―分子設計の新指針に:筑波大学

(2017年7月6日発表)

 筑波大学は76日、4つの炭素原子が正方形の頂点に位置する分子「正方形型シクロブタジエン」の観測に世界で初めて成功したと発表した。6個の炭素が結合した亀の甲型分子「ベンゼン」はよく知られているが、正方形型は理論的に存在が予測されながら、これまで実験的には確認できなかった。今回の成果は化学の教科書に新たなページを加える発見だとして、今後の新たな分子設計の指針になると期待している。

 筑波大の関口章教授(研究当時、現特命教授・名誉教授)の研究グループが、イスラエル工科大学と共同で観測に成功した。

 ベンゼンが亀の甲型分子であることは1865年にドイツの化学者ケクレが発見、20世紀の爆発的な有機化学の発展を導いた。ケクレは同様の構造として正方形型シクロブタジエンの合成にも挑戦したが、その試みは失敗に終わった。その後、電子軌道との関係で安定した正方形型シクロブタジエンが存在することが理論的には予想されていたが、実験的にその存在を確認することはできなかった。

 これに対し、関口教授らはシクロブタジエンの4つの炭素に結合している水素の代わりにケイ素を含む置換基を結合させると、熱的にも安定化した物質になることを発見した。そこでこの試料を77℃以上に加熱したところ、正方形型シクロブタジエンが発する特有の信号を、電子スピン共鳴法(EPR)と呼ばれる測定技術でとらえることに成功した。測定したデータを詳しく解析したところ、シクロブタジエンの4つの炭素とケイ素置換基を結びつけている電子分布の特性などを解明することに成功した。

 これらの成果について、研究グループは「新たな分子設計指針となる」と期待している。