強誘電体 ナノサイズ化で特性制御―振動発電の高効率化に道:名古屋大学/科学技術振興機構/物質・材料研究機構/東京工業大学/愛知工業大学/静岡大学
(2017年7月12日発表)
名古屋大学と(国)物質・材料研究機構などの研究グループは7月12日、身の回りの小さな振動を電気に変える振動発電を高効率化する新手法を発見したと発表した。強誘電体の構造をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)単位で制御すれば、発電効率に影響する特性を変えられることを突き止めた。発電素子の小型化で、建造物や高速道路などの劣化を監視するセンサーなど自立電源の実現に役立つ。
研究グループには、名大、物材機構のほか、東京工業大学、愛知工業大学、静岡大学、スイス連邦工科大学の研究者らが参加した。
チタン酸バリウムなどの強誘電体は材料内部に正負の電荷が対になった電気双極子が整列(分極)しており、外部から力を加えることでその分極の向きの割合を変えられる圧電特性を持つことが知られている。
研究グループは今回、代表的な強誘電体「チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)」の膜を基板上に作製、その膜の一部を削り取って高さ1,000分の1.2mm、幅が最小1万分の2mm(200nm)というナノサイズの棒状にした。棒の内部をX線で調べたところ、棒の最小幅によって垂直方向の分極と水平方向の分極の割合が変化していた。特に幅が1,000分の1mm未満では垂直方向の分極だけになった。
強誘電体はこれまで、外部から電圧や力をかけることなしに分極を完全に一方向にそろえることはできなかった。ところが今回、強誘電体の形状やサイズをナノレベルで制御すれば分極の向きを100%そろえられることがわかった。さらに、ナノサイズの棒の側面を金属膜で覆うことで水平方向の分極だけにすることにも成功、材料の形状やサイズなどを制御して強誘電体の特性を変えるという新しい道を開いた。
新しいアプローチを活用すれば、強誘電体の圧電特性の飛躍的な向上が期待できると研究グループはみている。身の回りにあるさまざまな装置や高速道路などの構造物、機器をインターネットと結んで制御したり監視するIoT(モノのインターネット)化が今後急速に進展すると考えられるが、そのために必要な小型センサーの自立型電源の実現に役立ちそうだ。