水道管の腐食リスクを調べる電気探査法を開発:産業技術総合研究所
(2017年7月11日発表)
(国)産業技術総合研究所は7月11日、地下に埋設された水道管が腐食しやすい土壌かどうかを推定する高周波交流電気探査装置を開発したと発表した。道路を掘削せずに、探査装置のローラーを路面に転がしながら短時間で測定できる。急増する老朽水道管の更新の優先順位を決めるのに役立つ。
水道管(鉄管)は道路から約1mの深さに埋設されている。鉄管が腐食しやすいのは、地盤の比抵抗が小さく、塩分を含む粘土土壌であることが分かっている。比抵抗とは物質の固有の電気抵抗をさす物理量で、低いほど電気を通し、鉄管がさびやすくなる。
電気探査は資源探査や土木調査などに幅広く利用されてきた。これまでのように道路を掘り金属電極を差し込む方式だと手間と費用がかかりすぎる。そこで路面を移動しながら探査できるローラー型に改良した。ローラーの表面には超吸水性のスポンジを使い、凹凸のある地表面でも密着度をよくし、通電能力を高めた。
送信機からの高周波は、2台の電極ローラーと送信装置の「送信ダイポール」から発信される。これを2台のローラーを組み合わせた電極と受信機の「受信ダイポール」で比抵抗を測る。
送信装置と受信装置の間隔を変えながら、GPS(全地球測位システム)の信号で同期を取ることで、極めて微細な電位差と電流値を検出し、土壌の比抵抗を推定する。
その数値を米国国家規格のデータと照らし合わせ、水道管の腐食リスクを判定する。比抵抗の値が15Ωm(オームメートル)以下だと腐食土壌と見なされる。
この装置を使って神奈川県横須賀市上下水道局などと、同市内の市街地で実際に測定した。さらに道路を掘削し実際の土壌の比抵抗と比較したところ、水道管の直上、直下ともに数値がよく一致し、探査装置の有効性が確認できた。この地域は15Ωmを下回り腐食リスクが高かった。
測定の準備から終了まで30分程度と短時間でできるため、交通量の多い道路での調査に力を発揮しそうだ。