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遺伝子と病気の関係解明へ―ノックアウトマウス360系統がモデル動物に:理化学研究所

(2017年7月11日発表)

 (国)理化学研究所は711日、ほ乳動物の遺伝子の機能解明に取り組む「国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)」の最新成果を発表した。特定の遺伝子の機能を壊した実験動物「ノックアウトマウス」とヒトの病気の症状を比較分析した結果、360系統のノックアウトマウスがヒトの遺伝性疾患のモデル動物になることなどが明らかになった。診断や治療が難しい未知の遺伝性疾患の解明などに役立つ。

 IMPCはヒトの遺伝子が持っている機能と病気との関係を調べることを目的に、2011年から10年計画で始まった国際共同開発プロジェクト。理研バイオリソースセンターのほか、米国国立衛生研究所(NIH)や英国医学研究評議会など世界11カ国・地域から18の研究施設が参加している。

 研究プロジェクトでは今回、マウスが持つ遺伝子のうち3,328個についてそれぞれノックアウトマウスを作製、各遺伝子がマウスの生物学的な特徴にどう影響しているかという表現型と、ヒトの病気の特徴との類似性について分析した。

 その結果、①360遺伝子のノックアウトマウス系統が、すでに知られているヒト遺伝病のモデル動物になる、②135遺伝子のノックアウトマウス系統が単一遺伝子の変異によって発症する遺伝性疾患「メンデル遺伝病」のモデル候補になる、③これまで不明だった1,092遺伝子の機能が解明できた、という。

 IMPCは昨年9月には、ノックアウトマウスによる研究で、両親から受け継ぐと胎児のうちに死亡してしまう400以上の胎生致死遺伝子を特定、ヒトの疾患遺伝子との関連について明らかにした。今回の成果は、これら遺伝子機能に関する情報をさらに大幅に拡大したものと理研はみている。IMPCで作製・解析されたノックアウトマウスは、理研バイオリソースセンターなど世界各国の中核施設を通じて研究用に供給されるという。