北九州の豪雨災害の原因は猛烈な積乱雲の線状降水帯―筑紫山地の一部、脊振山地が線状降水帯を強めた可能性:気象庁気象研究所
(2017年7月14日発表)
国土交通省の気象庁気象研究所は、7月5日から6日にかけて福岡県・大分県境付近で起きた記録的な豪雨の原因について数値シミュレーションなどを使って改めて分析した結果を、7月14日に発表した。
それによると九州北部に停滞していた梅雨前線に向かって、南西から温かく湿った大量の空気が流入した。上空5,500m付近には平年より約3℃低い-7℃以下の寒気が流入した。このため積乱雲が次々と発生し、猛烈に発達して東へ移動する数本の線状降水帯が連続したため、同じ場所に強い雨を継続して降らせた。
この線状降水帯が発生した九州北部には、筑紫山地の一部で高度1,000m前後の東西に走る長い分水嶺の脊振(せふり)山地がある。
数値シミュレーションの解析の結果、線状降水帯は脊振山地がなくとも生まれるものの、今回は脊振山地の存在が線状降水帯を強化し、長続きさせることに影響した可能性があり、未曾有の豪雨につながったものと見ている。
線状降水帯は、積乱雲が次々と発生して列をなし、数時間以上にわたってほぼ同じ場所に停滞し豪雨をもたらす。5年前の2012年7月14日にも同じような九州北部豪雨(福岡県豪雨)でも線状降水帯が現れた。今回はより狭い地域に、短時間(1時間〜3時間)により多くの降雨が集中したのが大きな特徴とされる。
前回と今回を比較した結果、今回(福岡県朝倉地区)は最大1時間降雨量が129.5mm(前回、福岡県黒木地区91.5mm)、3時間降雨量が261.0mm(同174.5mm)と降雨量が特に多かった。
また前回は高度500mの水蒸気量が多く、気温も高かった。一方で、上空5,500m付近では、気温は今回の方が3〜5℃も低かった。このため大気の状態は今回の方がより不安定であり、積乱雲がより多く発達し、短時間に大量の雨をもたらしたものと分析している。