内部に金属を集積した大環状分子を開発―強い配位結合により精密な分子認識可能に:筑波大学
(2017年7月25日発表)
筑波大学は7月25日、金属原子を内孔に集積できる大環状分子を開発したと発表した。金属を固定するための配位部位(pap部位)を6つ持つhexapapと呼ばれる分子で、精密な分子認識センサーや高機能触媒などへの展開が期待されるという。
他の分子を捕まえる能力を持つホスト分子をうまく設計すると、狙った分子(ゲスト分子)と特異的に相互作用し、物質の選択的な分離や反応などに活用できる。
天然のホスト分子、あるいは、これまでに作られてきた人工のホスト分子の多くは、水素結合などの比較的弱い相互作用を分子認識に用いている。研究グループは、より精密な分子認識の実現を目指し、強い結合、強い相互作用を持つホスト分子の開発に挑戦し、今回、大環状分子hexapapの亜鉛錯体であるZn-hexapapを開発した。
強い結合をつくる部位は反応性が高く、それらを分子内にうまく並べることは難しいが、開発した亜鉛錯体Zn-hexapapは6つの亜鉛原子を内孔に集積した構造を持ち、比較的強い相互作用である配位結合を多数用いることができる。
ゲスト分子にジカルボン酸を用いた実験では、Zn-hexapapが内孔にジカルボン酸分子を捕まえると、双極放物面状に歪んだ形で2分子が積み重なる構造(2量体)を形成することが見出された。
さらに、この2量体に捕捉されるジカルボン酸の分子数を、酸・塩基で制御できることを見出した。
今回の成果は多点配位結合による分子認識の制御を可能にするもので、精密な分子認識センサーや高機能触媒の開発が期待されるという。