人工ニューロン素子を用い脳の模倣システムを構築―数字の音声認識実験で99.6%の高い正答率:産業技術総合研究所
(2017年7月27日発表)
(国)産業技術総合研究所は7月27日、パリ・サクレー大学、アメリカ国立標準研究所と共同で、強磁性金属から成るナノサイズの人工ニューロンを用いて脳の情報処理模倣システムを作製し、極めて正答率の高い音声認識に成功したと発表した。
ヒトの脳を模倣した情報処理をニューロモロフィック・コンピューティングといい、曖昧で不完全な膨大な情報の学習や認識を、脳並みに低消費エネルギーで高速に実行するシステムの開発が期待されている。
研究グループは今回、こうしたシステム用の人工ニューロン(神経細胞)としてスピントルク発振素子と呼ばれる素子を用い、リザーバーコンピューターという概念に基づいてニューロモロフィックシステムを構築した。
スピントルク発振素子は、直流電流を流すとスピンの共鳴歳差運動が励起されて交流電流を発生する強磁性金属でできた素子。発生する交流電圧には緩和時間という時間遅れが伴い、発生する交流電圧の振幅は、電流値に比例しない非線形な振る舞いをする。この緩和時間と非線形性がニューロンの働きの模倣に向いている。
リザーバーコンピューターは、学習によるニューロン間の接合調整などを簡素化できるようにしたもので、回路の制御が簡単になるのが特徴。
作製したニューロモロフィックシステムを使って0~9の数字音声の認識実験を行ったところ、少ない学習回数でも音声認識の成功率は高く、正答率は最大99.6%という結果が得られたという。
今後システムをより高度化し、ビッグデータのリアルタイム情報処理の実現を目指すという。