「東京スカイツリー」で大気中の温室効果ガスを観測―250mの高さに計測機器設置し連続観測進める:国立環境研究所/東京大学ほか
(2017年7月27日発表)
(国)国立環境研究所、東京大学大気海洋研究所などは7月27日、共同で東京・墨田区にある「東京スカイツリー」において大気中のCO₂(二酸化炭素)やメタンなどの温室効果ガスとその関連物質の連続観測を進めていると発表した。
大都市における温室効果ガスと関連物質の大気観測は、世界的に見てもまだ少なく、パリや米国のインディアナポリス、ロサンゼルスなどでしか行われていない。
パリ協定で合意された世界の平均気温上昇を抑える目標を達成するためには、温室効果ガス排出量の削減と共にどれだけ排出しているかの監視が不可欠となる。
我が国の大都市レベルでの排出量監視は、平成20年度に打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)と平成30年度打ち上げ予定の「いぶき2号」(GOSAT‐2)による人工衛星観測データと高精度な地上観測により行うことが考えられているが、大都市圏での温室効果ガスの地上観測体制の整備は遅れているのが現状。
今回の観測プロジェクトは、環境研、東大大気海洋研と気象庁気象研究所、産業技術総合研究所が共同で進めているもので、平成28年3月に東京を代表する高所である高さが634mある東京スカイツリーの高さ250mの機器室に大気観測スペースを設けて開始した。
先ず、非分散赤外線吸収法による大気中のCO₂濃度の連続観測を昨年3月から開始し、続いてキャビティリングダウン分光法という方法を使った分析計によるCO₂、メタン、CO(一酸化炭素)の連続観測を今年1月から実施、さらに2月から大気中の酸素濃度の超高精度連続観測をスタートさせている。
それと合わせて、ガラスの容器に観測現場の大気を採取し、つくば市(茨城県)の環境研に持ち込み実験室で成分を分析するフラスコサンプリングによりCO₂、メタン、一酸化二窒素、CO、六フッ化硫黄の各濃度を計測すると共に、CO₂中の放射性炭素同位体比(放射性炭素14の存在割合)を分析している。
研究グループは「CO₂濃度と同時に放射性炭素同位体比を分析することで、そのCO₂が植物の呼吸から出たものか、化石燃料を燃焼して出たものかが推定できる」といっている。