受動喫煙で大動脈疾患死亡が約2倍に―5万人の追跡調査で明らかに:筑波大学
(2017年7月31日発表)
筑波大学の山岸良匡准教授、磯博康客員教授らの研究グループは7月31日、他人のタバコの煙を浴びる受動喫煙が大動脈疾患による死亡を約2倍に増加させていると発表した。約5万人の健康状態を16年間にわたって追跡調査して明らかにしたもので、家庭内より家庭外での受動喫煙がより大きく影響していることもわかった。受動喫煙が有害だとの認識がさらに広がりそうだ。
調査は、1988年に文部科学省の研究費で開始、全国45地区の住民4万8,677人を対象に質問用紙で生活習慣を把握し、その後16年間にわたって健康状態や死亡率を追跡調査した。研究グループは今回、この調査結果をもとに受動喫煙が健康状態にどのように影響しているかを正確に評価するため、統計学的な手法で他の要因が及ぼす影響も勘案しながら分析した。
分析では受動喫煙の程度によって、①家庭内・家庭外ともほとんどない「受動喫煙の程度が低い集団」、②家庭内で毎日2時間以上、または家庭外でほぼ毎日という「受動喫煙の高い集団」、③受動喫煙が中程度の「その他の集団」の3グループに分けて比較した。
その結果、受動喫煙と大動脈疾患による死亡との関係が統計学的に初めて裏付けられ、受動喫煙の高い集団は低い集団よりも大動脈疾患(大動脈瘤・大動脈解離)によって2.35倍も死亡しやすいことがわかった。また、家庭内と主に職場や飲食店で受けている家庭外での受動喫煙との比較では、家庭外での影響がより強かった。
研究グループは「日本での受動喫煙対策は諸外国に比べて明らかに遅れている」として、今後その対策の重要性がよりいっそう明確になったとしている。