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コンクリートのひび割れ―人工知能で高精度・短時間で検出:新エネルギー・産業技術総合開発機構/首都高技術/産業技術総合研究所ほか

(2017年8月3日発表)

 首都高技術(株)、(国)産業技術総合研究所、東北大学は83日、コンクリートに入った幅0.2mm以上のひび割れを高精度検出する人工知能(AI)システムを開発したと発表した。スマートフォンなどで表面の画像を撮るだけで正解率80%以上という実用レベルの精度で検出できる。今後はウェブ上で点検事業者が利用できるよう無料で公開、作業現場での検証を進めて2年以内の実用化を目指す。

 高速道路や橋梁など日本の社会インフラは建設から50年以上たつものが今後急速に増え、その維持管理が大きな社会課題になっている。特にコンクリート構造物の表面にひび割れが入ると急速に劣化が進むため、早期の検出・補修が求められる。しかし、従来は検出作業がほとんど人手で進められており、時間とコストがかかるのが問題だった。

 研究グループは今回、コンクリート表面に現れる特有のパターンを検出する画像解析技術と、そのパターンからひび割れを識別する人工知能を組み合わせたシステムを開発。ひび割れ検出の高精度化と人手を省く高効率化を試みた。

 まず、傷や汚れ、雨水による濡れなどさまざまな状態のコンクリート構造物表面を撮影して多数のひび割れサンプル画像を収集、表面に見られる特有のパターンとひび割れの関係を学習させた。その結果、表面画像を新システムに入力すれば精度よくひび割れを検出できることがわかった。幅0.2㎜以上のひび割れなら80%以上の正解率で検出、12%程度だった従来の画像解析技術を大きく上回った。

 新技術はインターネットのクラウド上に構築したシステムに組み込めば、作業現場でスマートフォンなどの携帯端末からいつでも利用できるようになるという。今後は首都高速道路などのコンクリート構造物で2018年度末まで実証実験を重ね、検出精度などの有効性を確認するとともに、点検作業時間を現在の約5時間から10分の130分にまで短縮することを目指す。