潮の満ち引きを利用し、地下水の利用可能量を把握:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年8月4日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は8月4日、自然の潮汐力(ちょうせきりょく)を利用して地層の水の通りやすさの透水係数を効率的に測る方法を開発したと発表した。海岸に近い所と遠い所の2地点に観測孔を設け、市販の自動観測機器を挿入して調べる。河川や湖沼のない離島で地下水資源の状態が適切に把握でき、飲み水や農業用水の持続可能な利用に役立つとみている。
南西諸島や太平洋諸島などの離島は、石灰岩などの水を通しやすい地層が多く、河川が少ないために飲料水や農業用水を、地下に溜まった雨水のくみ上げに頼っている。最近は海面上昇の影響によって、海水が地下の淡水層に浸透するなどの影響も出始めている。
地下水の通りやすさの透水係数を測るには、これまでたくさんの試験用井戸を掘り、ポンプで地下水をくみ上げる方法で水位低下の速さと大きさを分析してきた。1km四方の地下水を調べるには20箇所以上もの井戸の掘削が必要で、費用は1千万円を超えていた。
農研機構は、地下水の水位が潮の満ち引きに応じて周期的に変動することに着目し、地下水位の連続観測データから簡単、低コストで広範囲の透水係数を推定する手法を開発した。
海岸近くとやや内陸の2地点に直径5cm程度の細い観測孔を開け、そこに観測機器(自動圧力センサー)を設置する。40日間以上にわたり、1時間ごとの観測データを採り続け、計算式に当てはめて透水係数を算出し、地下水資源の状態を予測した。
これで数百m以上の範囲の地層の水の通りやすさがつかめた。沖縄県の離島で実施したところ、島内の位置により透水係数が2~3倍ずれることが推定できた。
この離島の地層では、地下の淡水層の下に海水が少しずつ侵入しており、透水係数が大きいほど淡水層が薄くなることがわかった。
地層の性質や淡水分布の不均一性をつかむことは、地下水解析モデルの作成には不可欠で、地下水をくみ上げる井戸の配置、深さ、くみ上げ量の推定に利用できる。