進行がん患者の家族が経験する葛藤の実態を検証―緩和ケア病棟で最後迎えた患者の家族を対象に実施:筑波大学/東北大学
(2017年8月4日発表)
筑波大学と東北大学は8月4日、緩和ケア病棟で最後を迎えた進行がん患者の家族が経験した家族内の葛藤(かっとう)の実態について調べた結果を発表した。
葛藤とは、心の中に相反する感情や欲求が存在し、何を選べばよいか迷うこと。
今回の検証は、両大学が共同でがん患者の家族が具体的にどのような葛藤を経験しているのか、どのような家族に葛藤が多いのか、といったことを明らかにしようと行った。
緩和ケア病棟は、末期がんの患者を対象に治療よりも患者の体や心の苦痛、不安などを和らげて家族と共に人生の最後を落ち着いて送ってもらう施設で、全国にある。
そうした施設に入っているがん患者の家族が経験する葛藤は、がん患者の苦痛や寂しさ、そして介護者の負担感や悲嘆(ひたん:悲しみなげくこと)などに影響するといわれる。
検証は、NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会に加盟している国内71医療機関の緩和ケア病棟で、2016年1月31日以前に亡くなった患者の遺族458名を解析の対象にして「Outcome-Family Conflict scale(OFCスケール)」と呼ばれる評価スケールを用いて行った。
その結果、家族の42.2%が家族内の葛藤を少なくとも1つは経験し、家族の年齢が若い場合や家族内で意見を強く主張する人がいた場合、病気後に家族内でのコミュニケーションが十分に取れていなかった場合に家族内の葛藤が増え、また病気前に交流がなかった家族と連絡をとるようになった場合に家族内の葛藤が減る、ことが分かった。
こうした知見から研究グループは「医療従事者などが家族内の関係性やコミュニケーションの状況を理解して関わることが家族内の葛藤の有無に気付くことに役立ち、進行がん患者の家族への支援、そして患者、家族のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながると考えられる」と結論している。