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骨格筋の減少と内臓脂肪の増加は「脂肪肝」を悪化させる―通院患者を対象にした調査結果を解析して判明:筑波大学

(2017年8月16日発表)

 筑波大学は816日、骨格筋の減少と内臓脂肪の増加は「脂肪肝」を悪化させることが分かったと発表した。同大学附属病院に通院する患者を対象に行った調査の結果を解析することで判明した。

 食習慣の欧米化と運動不足にともなって肥満者が増え、肝臓に脂肪やコレステロールが溜まってしまう脂肪肝になるケースが増加の一途をたどっている。脂肪肝は、これまで軽い病気と考えられてきたが、肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性や様々な生活習慣病を引き起こす恐れのあることが分かってきている。

 そして、骨格を動かす筋肉である骨格筋の減少が脂肪肝の発症と進展に影響することが判明したとする報告が最近海外で発表されている。

 こうしたことから、今回、医学医療系 正田純一教授らの研究グループは、筑波大学附属病院(茨城県 つくば市)の肝臓生活習慣病外来に通院する患者を対象に骨格筋減少と内臓脂肪増加が脂肪肝にどのような影響を及ぼすかについて検討した。

 肥満者は、非肥満者より骨格筋、脂肪、骨の全ての重量が多く、骨格筋の減少が見逃されやすいといわれている。

 そこで研究グループは、肝臓生活習慣病外来に通院する患者337人と健常者のボランティア135人の合計472人(男性255人、女性217人)を対象にして「InBody720」と呼ばれる体組成分析装置を用いて、骨格筋量と内臓脂肪断面積を測定してその両方の比(SVratio)を算出。その値から472人を4つの群に分類して解析した。

 その結果、骨格筋の減少と内臓脂肪の増加は脂肪肝を悪化させ、放置すると肝病変が進行することが分かった。

 研究グループは「脂肪肝人口が急増している我が国では、今後、医療チームによる積極的な食事および運動指導のサポートによる体組成異常の改善を介した肝臓リハビリテーションを展開していくことが重要な課題であると考えている」といっている。