セシウムイオンの非接触検出法を開発―新吸着材を合成し、テラヘルツ光分光法で計測:東京大学/筑波大学
(2017年8月24日発表)
東京大学と筑波大学の研究グループは8月24日、セシウムイオンを補足して閉じ込める「マンガン-鉄シアノ骨格錯体」という物質を合成し、これとテラヘルツ分光法とを組み合わせることにより、セシウムイオンの非接触検出法を開発したと発表した。有害な放射性セシウムイオンの検出や回収に役立ちそうだという。
研究グループは、重い質量の原子を箱の中に閉じ込めると、原子はゆっくりと振動し極めて低い周波数の電磁波と共鳴するのではないかと考え、セシウムイオンの閉じ込めに適した空隙を多数持つマンガン-鉄シアノ骨格錯体を合成した。
この錯体にセシウムイオンを取り込ませ、周波数の低い電磁波であるテラヘルツ光(波長300㎛(マイクロメートル、1µmは100万分の1m )、周波数1012Hz前後の電磁波)を当てたところ、1.4THz(テラヘルツ)の周波数に吸収が観測され、アイデアが立証された。
そこで、テラヘルツ分光法を用いて水溶液中のセシウムイオン濃度の計測実験を実施、スペクトルの吸収から濃度などを割り出せることを確認した。また、この実験でマンガン-鉄シアノ骨格錯体のセシウム吸着能が極めて高いことを見出した。
セシウム吸着材としては顔料の一種のプルシアンブルー(紺青(こんじょう))が高い吸着性を示す物質として知られているが、マンガン-鉄シアノ骨格錯体のセシウム飽和吸着量はプルシアンブルーのそれをはるかに上回っていた。
今回の錯体合成と検出法開発の成果は、環境中に放出された放射性セシウムの計測、回収対策に活用されることが期待されるという。