水田の水の管理を遠隔・自動で行えるシステムを開発―スマホ、パソコンで観測データ見ながら自由に:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年8月22日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は8月22日、水田の水の管理を離れた場所から自動で行うことができるシステムを開発したと発表した。米作りで重要な水管理の省力化と高度化が併せて図れることから普及が期待される。
大手の農業系企業グループがこの水管理システムの販売を今年度中に開始する予定という。
水田の稲作では、人為的な水の管理が不可欠。米の収量や品質のアップを図るには、生育の状況や気象状況などに応じて水を送ったり排水したり、水位を調節したりといったきめ細かな水の管理が求められる。
また、大規模農家などでは、なるべく作業が集中しないよう早生品種、中生品種、晩生品種を組み合わせた栽培方法を取り入れており、品種に応じた複雑な水管理が行なわれている。
こうしたことから日本の水田稲作では、総労働時間の約2~3割が水の管理に費やされているといわれる。
今回のシステムは、水田の水情報をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら水の管理を遠隔・自動で自在にできるようにした。これだけの機能を持ったシステムを開発したのは国内初と同機構はいっている。
その仕組みは、給水バルブと排水口にインターネット通信機能とセンシング機能を付加した制御装置を取り付けて遠隔・自動で給水バルブと排水口を開け閉めするというもの。水田の端末で観測した水位や水温などのデータをスマホやパソコンで見ながら給水と排水を自由に制御することができ、複雑な水管理が行える。
制御装置は、太陽光発電と内蔵するバッテリーの電気で駆動する方式で、配線工事などなしに給水バルブ、排水口に後付けで設置できる。外部電源はいらない。
水管理に要する労力や必要な水の量は、水田の場所などによって大きく異なるが、農研機構の実証水田で行ったテストでは水管理の労働時間を通常より約80%削減し、出穂期から収穫までの用水量も約50%少なくすることができた。