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特定の悪性リンパ腫の発症メカニズムを解明―治療の可能性浮上:筑波大学

(2017年8月24日発表)

 筑波大学は8月24日、特定の悪性リンパ腫を引き起こすメカニズムの一部を解明したと発表した。現在、他の血液がんに使われている薬がこの悪性リンパ腫に有効であることも突き止めた。治療法の開発が期待されるという。

 この悪性リンパ腫は「濾胞性(ろほうせい)ヘルパーT細胞の性質を持つリンパ腫」と呼ばれている疾患。高齢者で発生頻度が高く、悪性リンパ腫のうちの約5%を占める。

 研究グループは3年ほど前に、この悪性リンパ腫においては、RHOA遺伝子と名付けられた遺伝子によって合成されるたんぱく質の一か所のアミノ酸に変異が生じていることを突き止め、これをG17V RHOA変異と名付けた。

 今回研究グループは、G17V RHOA変異によって生じた異常なRHOAたんぱく質がT細胞受容体シグナルを伝達するVAV1たんぱく質と結合し、VAV1たんぱく質の異常な活性化を引き起こすことを解明した。

 また、G17V RHOA変異が無い場合の一部については、VAV1遺伝子に異常があり、VAV1たんぱく質の活性化を自己抑制する仕組みが壊れて異常な活性化が起きていることをつかんだ。

 これらの2つの知見から、VAV1遺伝子の異常な活性化が「濾胞性ヘルパーT細胞の性質を持つリンパ腫」の発症に関わっていることを突き止めた。

 VAV1たんぱく質の活性化は、T細胞受容体シグナルの活性化を起こすが、これは他の血液がんで使用されているチロシンキナーゼ阻害剤(ダサチニブ)によって抑えられた。

 以上の発見により、この悪性リンパ腫については特異的なゲノム異常に基づく発症が示されたことになる。今後はRHOA遺伝子やVAV1遺伝子の変異の診断に基づく治療法の開発を目指すという。